泥沼通信

祭りの戦士 @ กลับมาจากกรุงเทพฯ

 

Category: 思想など   Tags: 思想  

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ブックマーク 3 フリーターに未来はない?

 フリーターに未来はない? (生田武志)

 お見事です。5年前の文章のようですが、まるで昨日書かれたものであるかのように新鮮で生々しく感じました。なぜ早くにこのような文章と出会えなかったのでしょうか。話題の『「野宿者襲撃」論』も読まねばなりますまい。

 私は二十代の半分をフリーターとして過ごしました。その後数年間、いくつか小さなスタジオの正社員として過ごしたあとフリーランスになったのですが、自営業者とはいえ実際にはフリーターの身分と大して変わりないのです。手に職があるからこそいわゆるフリーターとは一線を画しているのですが、ご他聞に漏れずハイテク・コンピューター技術が伝統的な職人芸を駆逐してゆくという事態は、アニメ業界でも今まさに起こっている厳しい現実です。今すぐどうにかなってしまうとは思いませんが、5年10年というスパンで考えれば、私自身の職業的なスキルが売り物にならなくなる日は確実に訪れると考えるべきなのです。そのとき私は3人の扶養家族と住宅ローンを抱えたままフリーターに逆戻りです。私も一念発起してフォトショップの扱い方を覚えるなり、何らかの手を打っておくべきなのかもしれません。ひょっとするとのんきにブログの更新などしている場合ではないのかもしれない。(……などと書いていたらマジで不安になってきました。)

 とはいえこの手の不安はけっして他人事ではなく、すべての人にとって共通の不安だと思います。(生田さんの文章はフリーターや野宿者を題材に書かれたものですが、実際には資本の仕掛ける競争のゲームの中に生きている人すべての問題であり、現行社会の非人間的な矛盾点がむき出しになるのが、フリーターや野宿者たちにおいてだということでしょう。)生田さんが「椅子取りゲーム」として表現している競争を、私たちの資本主義社会が私たちを管理するために徹底的に利用していることが、私たちの日常意識の隙間に食ってゆけなくなるという不安が忍び込んでくる一つの大きな要因なのです。私たちは目の前に消費というニンジンをぶら下げられて欲望を煽られ、没落の恐怖というムチでケツを叩かれながら息を切らして市場という名の競技場を走る馬みたいなものです。
 生田さんも前出の本田由紀さん同様、野宿者(負け組)自業自得論(5年前にはニートという言葉はまだなかったですね)を批判し、そのような存在が生み出されるのは現行社会の構造的な問題だと主張しています。しかし本田さんと明らかに違うのは、同じ構造的な問題を語るにしても、生田さんは資本が戦略的に用いている「競争」に照準を定めているところです。
 例えば生田さんは、ワークシェアリングなどの政策の意義を認めつつも、
……それは、なんだかんだいっても豊かな先進国である日本経済の国内問題の緩和策にすぎないのではないか。ワークシェアリングが「正規雇用・フルタイム労働」と「非正規雇用・不安定労働」の対立を「正規雇用」内の労働時間の程度差に解消するものだとすれば、それは資本の内部に、フリーター層が新たな(よりマシな)形で取り込まれることを意味している。しかし、それが資本の「補完と延命」ではないという保証はどこにもない。小倉利丸は「フリーターや高い離職・転職率は、学歴のない若年労働者階級による組織されざる階級闘争」だと言ったが、そのとき「組織されざる階級闘争」の主体は「正規雇用・短時間労働者」として資本に「正規」に吸収されることになる。それは例えば、グローバルな資本主義がもたらす「南北問題」「環境破壊」に抵抗するものでは全くない。また、資本と連動した「市場原理」「競争原理」に代わる原理を提出するものでもない。
……と分析し、ワークシェアリングはとりあえず(当座)の、日本経済内部の(局地的な)解決策にすぎないだろうと結論しています。
 おそらく本田由紀さんの「再チャレンジが可能な社会」の設計の試みも、生田さんの考えの中ではワークシェアリングと同様の意義と限界を持つ政策という位置づけになるはずです。つまり『ニートって言うな!』で展開された本田さんの議論は、ニートというシステムの逸脱者をシステムに再吸収し(=ニートを消滅させ)、資本の「補完と延命」に一役買うものではないという保証はどこにもないというわけでしょう。つまりそれは市場を疾駆する競走馬の状態からの私たちの自律を目指す議論ではないのです。まさに健全な社会からこぼれおちたホームレスやフリーターを社会復帰させるという方向ではなく、不安定就労層、野宿者を生み出し続ける社会のシステムそのものこそを問い、変革するという方向が必要だというわけです。

 したがって生田さんの示す方向性、すなわち……「当座の」そして「局地的な」解ではなく、「永続的でグローバル」な、ないしは「中期的で対外的」な解を考えること……は、祭りの戦士の課題と重なります。今まで私が自分の課題として無意識に求めていたことは、生田さんの以下のような言葉の中に含まれているように思います。
フリーター層の激増という「自然発生的に生み出してきた」「組織されざる階級闘争」を、従来の国家や資本とは別の選択肢を開いていくようなフリーター層の主体的な闘争に転換する必要があるのではないか。そして、政府と資本への抵抗のためには、当事者であるフリーター層自身の、この問題に対する意識化と、社会的に力を持ちうる何らかの連帯とがある程度必要になるだろう。
……「いす取りゲーム」は前者の「競争ゲーム」の一つと言うこともできる。ところで、このゲームは、本質的に欠陥をはらむものでありながら、それを廃棄することは困難であるように見える。そこで、この競争原理から成る「いす取りゲーム」と平行して、別の規則のゲームによる別の「いす」を作り出してしまえばどうか。あるいは、「いす取りゲーム」と同時に、場合によっては同じ「いす」を使ってでも別のゲームを展開させてしまうとすればどうか。つまり、「競争ゲーム」としての「いす取りゲーム」と平行して、別の「協力ゲーム」を展開させ走らせるという可能性はないだろうか。
「競争社会」への抵抗としての「協力ゲーム」は、従来の国家、資本、家族への「闘争としての協力ゲーム」(=共同闘争)として、つまり、従来の「ゲームの規則」に立たない者どうしの協力として考えるべきなのではないだろうか。
 

 資本主義社会の競争ゲームを廃棄してしまうことが可能かどうかはともかくとして、そのような外部のゲームのルール(価値観)を競争ゲームを中心に動いている現行社会の中に息づかせたい……たとえ押しつぶされて歪んだ形であろうともです……というのが、生田さん流に翻訳された祭りの戦士のミッションです。(これを上山さんは規範的環境整備という難しい言葉で表現していたわけです。)
日本における経済格差が将来フリーターを中心に激化することは疑えない。しかし、枠にはまらない「自由」を得たフリーターが現時点で求めているものは、経済的な闘争などではないのかもしれない。むしろ多くのフリーターが求めているのは、学校、会社のような退屈な、閉じられた世界の対極にくる濃密な時間、生の実感、そして予想外の出会いを伴う(メル友みたいな)コミュニケーションの機会なのかもしれない。
 そしてこのような学校、会社のような退屈な、閉じられた世界の対極にくる濃密な時間、生の実感、そして予想外の出会いを伴うコミュニケーションの機会こそ、私が「祭り」という言葉で表現したい状況であり瞬間なのです。
 まったくもって食っていくのはシンドイことです。しかし生き延びることと同じくらいに、このような危うい均衡の上に成り立った、ある意味奇蹟的な「祭り」の時間を手にしたいという渇望が私の中に癒しがたくあります。祭りの戦士はこのような濃密で強烈な陰影と色彩に彩られたドラマをを求めて日々太くて固い剣を振るっているのです。

Comments
いいぞっ! 
いざゆけ!
祭りの戦士っ!!
 
よおし! いくぞ〜!! アタタタタタタタタタ…………v-217  ヒデブー!

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「宮本浩樹の啓示板」を再開します。http://atls.web.infoseek.co.jp/cgi-bin/bbs/petit/bbs.cgi
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プロフィール

荒井賢 (Ken Arai)

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 職業 アニメーション背景制作
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